折角お借りできたGPUの搭載されたPCなのでゲームをプレイとはならず、仮想環境でGPUを使ったAI(?)な環境整備とベンチマークを行ってみました。前回はWSL2環境でのUbuntuを使って環境整備を行っていましたが、さすがに色々なパッケージや環境変数設定、バージョンのチェックがありインストールしていくのはかなり大変なので、できれば事前に整備されたOSコンテナのイメージをしようできればいいのになと思っていました。そんななか、いろいろ検索していき、WindowsのDocker Desktop環境(WSL2のバックエンド使用)でもGPUを使用することができるようになっていたようです(パフォーマンスも改善されているようです)。そこで、今回はDocker環境下でも同様にGPUの動作ができるかを検証してみました。
今回は以下の情報がなければ実現できませんでした。ありがとうございます。
ただ、そのままでうまく行かない部分もあったのでその部分は変更しています。
今回使用したPC環境
- PC : DELL ALIENWARE M15 R3ゲーミング ノートパソコン
- OS : Windows 10 Home(64bit)
- GPU : NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER 8GB GDDR6 with Max-Q Design
Windows 10 Insider Preview Build 20150 (以降) のインストール
まずは、Windows 10 Insider Previewに参加します。Build 20150 (以降)でないとWSL2のバックエンドからのGPU使用はできないようです。現在のOSバージョンはwinverコマンド
で確認してください。
今回使用しているバージョンは以下のようになっていました。
あとは以下のエントリーを参考にして、WSL2を有効化してください。
NVIDIA Drivers for CUDA on WSL のインストール
WSLで使用可能なNVIDIAのドライバ(Windows側のドライバ)は以下からダウンロードします。前回のエントリーで使用したものと同じものになります。(ダウンロードにはユーザログインが必要)
ダウンロード後インストールすると以下のようなバージョンになっていました(2021.02.24現在)
Ubuntu のインストール
Windows StoreアプリからUbuntu18.04をインストールします。
Ubuntuのインストールが終わったら、【起動】ボタンをクリックして起動します。
初回起動時はユーザ名とパスワードの登録を行うことになります。入力を行えば無事にログインができるようになります。
今回インストールしたUbuntuはGPUの認識確認および最終的なDockerイメージを起動するための設定用のOSになります。そのたま少しバージョンが古くても問題はありません。
WSL2のUbuntu での初期設定
apt関連の更新を行います。前回のエントリではこの時点でPythonのインストールを行っていましたが、今回は設定用のOSのため、Pythonのインストールをあえて行っていません。
sudo apt update
sudo apt -yV upgrade
あとは、CUDAツールキットをインストールします。今回インストールするのは11.2となります。
$ sudo apt-key adv --fetch-keys http://developer.download.nvidia.com/compute/cuda/repos/ubuntu1804/x86_64/7fa2af80.pub $ sudo sh -c 'echo "deb http://developer.download.nvidia.com/compute/cuda/repos/ubuntu1804/x86_64 /" > /etc/apt/sources.list.d/cuda.list' $ sudo apt update $ sudo apt install -y cuda-toolkit-11-2
※ NVIDIA ドライバ 465.42 かつ Windows Insider Preview ビルド 21292 以降で、CUDA 11.2 がサポートされたようです。
/usr/local/cuda/samples
にサンプルがあるので、その中にあるmakefileをビルドして、出来上がった実行ファイルdeviceQuery
を実行してGPUの認識情報が表示されていれば正常に認識されています。
$ cd /usr/local/cuda/samples $ sudo make $ cd /usr/local/cuda/samples/bin/x86_64/linux/release $ ./deviceQuery ./deviceQuery Starting... CUDA Device Query (Runtime API) version (CUDART static linking) Detected 1 CUDA Capable device(s) Device 0: "GeForce RTX 2080 Super with Max-Q Design" CUDA Driver Version / Runtime Version 11.3 / 11.2 CUDA Capability Major/Minor version number: 7.5 Total amount of global memory: 8192 MBytes (8589934592 bytes) (48) Multiprocessors, ( 64) CUDA Cores/MP: 3072 CUDA Cores GPU Max Clock rate: 1230 MHz (1.23 GHz) Memory Clock rate: 5501 Mhz Memory Bus Width: 256-bit L2 Cache Size: 4194304 bytes Maximum Texture Dimension Size (x,y,z) 1D=(131072), 2D=(131072, 65536), 3D=(16384, 16384, 16384) Maximum Layered 1D Texture Size, (num) layers 1D=(32768), 2048 layers Maximum Layered 2D Texture Size, (num) layers 2D=(32768, 32768), 2048 layers Total amount of constant memory: 65536 bytes Total amount of shared memory per block: 49152 bytes Total shared memory per multiprocessor: 65536 bytes Total number of registers available per block: 65536 Warp size: 32 Maximum number of threads per multiprocessor: 1024 Maximum number of threads per block: 1024 Max dimension size of a thread block (x,y,z): (1024, 1024, 64) Max dimension size of a grid size (x,y,z): (2147483647, 65535, 65535) Maximum memory pitch: 2147483647 bytes Texture alignment: 512 bytes Concurrent copy and kernel execution: Yes with 2 copy engine(s) Run time limit on kernels: Yes Integrated GPU sharing Host Memory: No Support host page-locked memory mapping: Yes Alignment requirement for Surfaces: Yes Device has ECC support: Disabled Device supports Unified Addressing (UVA): Yes Device supports Managed Memory: Yes Device supports Compute Preemption: Yes Supports Cooperative Kernel Launch: Yes Supports MultiDevice Co-op Kernel Launch: Yes Device PCI Domain ID / Bus ID / location ID: 0 / 1 / 0 Compute Mode: < Default (multiple host threads can use ::cudaSetDevice() with device simultaneously) > deviceQuery, CUDA Driver = CUDART, CUDA Driver Version = 11.3, CUDA Runtime Version = 11.2, NumDevs = 1 Result = PASS
実行の様子
これでWLS2上のUbuntuからGPUの認識が確認できました。 続いてはDocker Desktopをインストールして、Dockerコンテナ側のOSからGPUの機能を使用していきます。
Docker DeesktopのインストールとWSL2との連携
参照したエントリの箇所でいうと、Docker Desktop とその WSL 2 バックエンドを使う方法
に該当します。こちらのほうが手順が少ないのでおすすめです。
まずはDocker Desktop
をダウンロードしインストールを行っておきます。
参考
Docker Desktop for Windows
は以下からダウンロードし、インストールを行ってください。
インストール後に、WSL2と連携を行います。Docker Desktop
を起動して
画面上部にある、【歯車アイコン】のボタンをクリックして、【Settings】の画面に遷移して、【Resources】→【WSL Integration】を選択し、画面内のチェックとトグルを有効化することで
設定前の状態
これで、Docker Desktop
でのWSL Integrationを有効化
する事ができます。
設定後の状態
WSL2上のUbuntuにDockerをインストールするよりも簡単に設定が行えます。
NGC のコンテナイメージを起動する
NGCとはnVIDIA GPU CloudのことでnVIDIAが提供するDockerイメージをいいます。
NGC はディープラーニング、機械学習、HPC のための GPU 対応ソフトウェア総合カタログを提供しています。NGC コンテナーは、高性能かつ導入が容易なソフトウェアを提供します。既に NGC コンテナーを使い、最速の結果を出したという実績もあります。インフラの構築から開放されるので、NGC を利用して、ユーザーは効率の良いモデルの構築、最適なソリューションの実現、短時間でのインサイトの収集に集中できます。
今回はこのコンテナを先程起動したUbuntuでDockerのコンテナを起動していきます。WSL2のUbuntuのsh上で以下を実行します。
今回使用しているコンテナはtensorflow:20.12-tf2-py3
のソフトウエア情報はこちらにあります。
$ sudo docker run --shm-size=1g --ulimit memlock=-1 --ulimit stack=67108864 --gpus all --rm -it nvcr.io/nvidia/tensorflow:20.12-tf2-py3
上記を実行すると、コンテナのダウンロードを開始します。
NGCコンテナは結構大きいので、初回起動時にはダウンロードで時間がかかります。お茶でも飲みに行ったほうがいいと思います。
ダウンロード後にイメージが起動します。プロンプトが$
から#
になっているので、それで起動の判別ができると思います。起動したsh上で以下のように実行を行います。(参考にしたエントリ通りのテストになります)
# /workspace/nvidia-examples/cnn/resnet.py \ --export_dir=/tmp \ --display_every=10 \ --num_iter=100 \ --iter_unit=batch \ --batch_size=128 \ --precision=fp16
ですが実行すると、以下のようなエラーメッセージが表示されます。コンテナの実行なのでエラーが発生します。
実行時のログ
# /workspace/nvidia-examples/cnn/resnet.py \ --export_dir=/tmp \ --display_every=10 \ --num_iter=100 \ --iter_unit=batch \ --batch_size=128 \ --precision=fp16 (中略) ****************************************************************************************** 2021-02-24 13:22:05.788980: W tensorflow/core/framework/op_kernel.cc:1767] OP_REQUIRES failed at tile_ops.cc:223 : Resource exhausted: OOM when allocating tensor with shape[128,7,7,2048] and type half on /job:localhost/replica:0/task:0/device:GPU:0 by allocator GPU_0_bfc Traceback (most recent call last): File "/workspace/nvidia-examples/cnn/resnet.py", line 50, in <module> nvutils.train(resnet50, args) File "/workspace/nvidia-examples/cnn/nvutils/runner.py", line 218, in train model.fit(train_input, epochs=num_epochs, callbacks=training_hooks, File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/keras/engine/training.py", line 108, in _method_wrapper return method(self, *args, **kwargs) File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/keras/engine/training.py", line 1098, in fit tmp_logs = train_function(iterator) File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/def_function.py", line 780, in __call__ result = self._call(*args, **kwds) File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/def_function.py", line 840, in _call return self._stateless_fn(*args, **kwds) File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/function.py", line 2829, in __call__ return graph_function._filtered_call(args, kwargs) # pylint: disable=protected-access File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/function.py", line 1843, in _filtered_call return self._call_flat( File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/function.py", line 1923, in _call_flat return self._build_call_outputs(self._inference_function.call( File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/function.py", line 545, in call outputs = execute.execute( File "/usr/local/lib/python3.8/dist-packages/tensorflow/python/eager/execute.py", line 59, in quick_execute tensors = pywrap_tfe.TFE_Py_Execute(ctx._handle, device_name, op_name, tensorflow.python.framework.errors_impl.ResourceExhaustedError: OOM when allocating tensor with shape[2048,1000] and type float on /job:localhost/replica:0/task:0/device:GPU:0 by allocator GPU_0_bfc [[node gradient_tape/resnet50/fc1000/MatMul/Cast/Cast (defined at workspace/nvidia-examples/cnn/nvutils/runner.py:218) ]] Hint: If you want to see a list of allocated tensors when OOM happens, add report_tensor_allocations_upon_oom to RunOptions for current allocation info. [Op:__inference_train_function_13556] Function call stack: train_function
エラーメッセージ中のOOM
ってなんだろうと思ったらOut of memory (OOM)
ということのようです。そのため、今回はオプションで使用していた--batch_size
の値が128
になっていたので
64
に変更してみたらうまく実行されました。このコマンドの実行の内容の詳細がわかっていないので、適切な数値がよくわかりませんが、GPU側の搭載メモリによるものと予想されます。GPUによっては調整が必要のようです。
以下のようにすることでうまく実行ができました。
# /workspace/nvidia-examples/cnn/resnet.py \ --export_dir=/tmp \ --display_every=10 \ --num_iter=100 \ --iter_unit=batch \ --batch_size=64 \ --precision=fp16
成功時のログ
# /workspace/nvidia-examples/cnn/resnet.py \ --export_dir=/tmp \ --display_every=10 \ --num_iter=100 \ --iter_unit=batch \ --batch_size=64 \ --precision=fp16 (中略) global_step: 10 images_per_sec: 31.6 global_step: 20 images_per_sec: 393.3 global_step: 30 images_per_sec: 392.9 global_step: 40 images_per_sec: 392.4 global_step: 50 images_per_sec: 391.2 global_step: 60 images_per_sec: 393.3 global_step: 70 images_per_sec: 390.0 global_step: 80 images_per_sec: 394.1 global_step: 90 images_per_sec: 388.2 global_step: 100 images_per_sec: 390.5 epoch: 0 time_taken: 35.0 100/100 - 22s - loss: 11.4782 - top1: 0.2569 - top5: 0.3672
オプションの値を変えることでタスクマネージャーのGPUメモリの消費量が減っていたので効果があったみたいです。でもメモリの値はオーバーフローするほどにそこまで高くなかったのですが…
OOM
エラーの対処に関しては以下の情報が助けになりました感謝!
ベンチマーク手法参考ページ
おわりに
前回のエントリではアプリケーションやライブラリのバージョン、OSのバージョンなど気をつけることが大量にありましたが、コンテナではそこまで気にしなくても環境の設定が完了できるのはやはり魅力です。DockerからNGCコンテナを使用する方法をおすすめいたします。
これまでゲーミングPCのモニタなのにゲームもせずにベンチマークやAI系(?)の環境設定ばかりやっていたので、そろそろデルさんに怒られそう。
でも、実際には、AIをやるぜーっていって意気込んでGPU搭載したPCを購入したにもかかわらずいろいろ挫折して、最終的にゲーミングPCになることだってあると思います。そう思えば、自分の書いた情報も役に立つのかも。
次回はちょっとだけゲームを立ち上げてみて、状況を確認してみます。3Dのゲームをほとんどやらないので多分、感想しかでてこないと思いますが。
参考